BD試写会 20020828

『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』(以下、『BD』と表記)の版権は『オンリーユー』など他の作品と異なり、東宝株式会社が所有している。その為、国内で他の映画がDVD化されても、『BD』だけはDVD化されていなかった。それがようやく、この度DVD化されることになり、9月21日に発売されることとなった。

その発売を記念し、『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』DVD化記念 ニュープリント試写会が、東宝株式会社 映像事業部によって催されることになった。日時は、2002年8月28日(水)の18時30分開場、同19時開演で、場所は銀座のヤマハホールである。内容は、トークショーと上映会(ニュープリント版)からなっている。ゲストは、押井守(監督)さん、平野文さん(ラム役)、古川登志夫さん(あたる役)、鷲尾真知子さん(サクラ役)。司会は、おたっきぃ佐々木さん。

この文書は参加レポートである。記憶違いによる誤りは勘弁してもらいたい。

前回までのあらすじ

試写会開催の告知は7月中旬に雑誌等で行われた。幸いにも私は、知人からの情報でかなり早い段階でそれを知ることができた。

告知によれば、一般チケットは応募&抽選によって頒布されるとのこと(締切は8月17日)。情報を集めると、一般招待の枠は各誌あわせて推定500名程度のようだ(サイゾー:25組、アニメイト:10名、ニュータイプ:100名、アニメージュ:100名など。声優FC:各20名程度?)。

もちろん、すぐに応募した。

そして、締め切りも過ぎた8月25日、旅行から戻ると、2枚のチケットハガキが届いていた。図案は、いわゆるシャチホコラム(BDポスターの図案の一つ)をベースにしたものである。

友人らに連絡をとると、ほとんどが「仕事で行けない」と残念がっていた。

当日

いよいよ試写会の当日だ。かつてのイベント装備(『ルミネット』バッチや、右腕に巻く赤いヘアバンドなど)を鞄に詰めて出発する。会場のヤマハホールに到着したのは14時頃だ。かってにホールに入ったが、さすがに誰もいない。蒸し暑いところでボケ〜っと待っているのも嫌なので、時間をつぶすべく散髪したり、喫茶店で読書したり。

16時頃に再び会場に着くと、既に7人が階段に並んでいた。藤原雄さんたちも並んでいた(彼らも昼過ぎに来てたそうな)。私も列に加わった。開場まで2時間ちょっと。コンビにまで買い出しに行ったり、近くに並んでいる人たちと話したり。ホールの方からは上映チェックの音声が漏れてくる。行列を見渡すと、意外に若い人もいる。ケーブルテレビなどで『うる星』を知ったのだろう。

18時頃、行列が2列に詰められた。あと30分。

開場

チケットハガキと引き換えで、DVD『BD』の宣伝チラシが配布された。座席は自由席である。ロビーでは、DVDの予約を受け付けていた。予約特典はポスターの復刻版ポスターである。ステージ中央には、5脚の椅子が並べられており、その左右にDVD宣伝ポスターが配置されている。

我々は最前列の右側のあたりに着席した(私はA17)。ホールを歩くと、懐かしい人にも再会でき、なんか感慨深い。やがて、開演のブザーがホール内に響く。「公演終了は21時10分頃を予定しています」とのこと。

ゲストの入場

司会のおたっきぃ佐々木さんが登場。「自分の人生を変えた『うる星』。そのイベントの司会になるとは、正直言ってドキドキしています」とのこと。

声優さんらが登場。それぞれキャラクターの台詞を交えて挨拶。鷲尾さん「ハラッタマキヨッタマ。とらんきらいざぁ」。古川さん「にゃはははは、おじょうさーん」。平野さん「ラムだっちゃ」。どの台詞にも大拍手。鷲尾さんは普通のスーツ。古川さんは白いスーツ。平野さんは豹柄のスーツといういでたちだ。

『うる星』とは?

それぞれ声優さんに対して司会が「『うる星』とはどんな作品でしたか?」という質問。ああ、なんと芸の無い質問だ!。声優さんたちだって20年も昔の作品に対する評価は既に固まっているだろうに。そして、この試写会に参加しているほとんどの人にとっては既に知っている情報だろうに。まさに、FAQ(しばしばなされる質問)である。

平野「声優として最初の仕事だった。土曜10時から収録。声優がキャラクターを作っていった。キャストと制作側とがいい意味で競い合っていた」。古川「ぶっつけ本番で録ったりしてた。大金庫の話の収録なども」。鷲尾「今でも評価高い」。

平野「豪華キャストの中新人が私一人で、皆さんに引き上げて頂いた」「キャラが素晴らしい。声優がキャラクターを作っていったというところもあるし。千葉さんなんかは最初生徒Aでしたから」「スタッフ間の連帯があって、『ああ絵でこんな事やってる。じゃあ声もこうしなきゃ』というレベルの高い競争があったのが印象的」。

古川「共演者が変な人ばかり。僕はノーマルな人間だから普通じゃ駄目なので、負けないようにテンション保つのが大変」。「あたると面堂しか出ていない『大金庫! 決死のサバイバル』の話はぶっつけ本番でやったりしました」。

平野「本番中に古川さんのアドリブとかで、笑いを堪えるのが大変」。

古川「そりゃ千葉君が…(笑)。僕は普通にやってましたから。千葉君は、テストの時とは絶対に違うこと言いますから」。

『BD』について?

次は「みなさんにとって『BD』とは?」という質問。

鷲尾さん「最近になってまたビデオで観た。ヘンな作品。押井さんはとてもヘン」。佐々木「ヘンとヘンを集めて♪。ここのお客さんはきっと全台詞を覚えてますよ」。古川「金字塔です」。平野「藤岡さんがすごい。一流は一流を知る」。

鷲尾「正直言って忘れちゃっていたというのがあるんだけど、当時は必死でやった作品なんですが、他の現場で『面白かった』『今でも見ている』と言われることが多くて、最近ビデオを見てみたんです。そうしたら面白くて、当時考えていなかった不条理というのが見えて。『押井さん、なんだ? この人』って。声を入れている人も変な人が多くて(笑)。変なのが絡み合って出来た変な作品だと思います」。

古川「アニメの金字塔となる作品」「それまでは僕は二枚目の役とかだったのに、この作品で『にひひひひひひひ』とか。女性と面と向かって話すことも出来ない内向的な僕が『おじょうさ〜〜〜〜ん!』とか」。「押井さんや高橋留美子さんの頭はどうなっているのか、凄い作品です」。

平野「ゲストキャラで夢邪鬼役の藤岡拓也さんが来られましたが、変な中に入っても馴染んでいた」「キャラクターをご自分に引き寄せていた」。

押井監督の登場

押井「DVDは音がLDよりもかなり良くなっている。当時の音源の保存状態がよかった。もちろん、最新技術を用いた最近の作品にはかなわないが、それでもかなり良い」。

押井「今になって観ると冷や汗が出るようなアラがある。しかし、当時の自分の演出力やスタッフの力ではあれが限界。今になって作り直せば完成度は高くなるが、あのテンションは保つことが出来ない。まさに、若いからこそできた作品」。

押井「音響監督の斯波さんにはお世話になった。映像と音楽とは50対50だ。(TV版について)毎週毎週、録音スタジオの現場に行った。監督は映像の現場と音声の現場と両方にいなければならない。大変だった」。

押井「『うる星』のキャラはみんな性格が分裂。サクラは鷲尾さんぐらいじゃないと務まらない。サクラの声とあたるの声について最初のうちは非難ごうごう。毎週数十通の投書。最初の数行を読めば内容はわかる」。

押井「こういうもの(『BD』)を造った時代があったんだな。初号の日は雪だった。監督人生もこれで終わりかなと思った。せつなかった」。

押井「僕にとっては鷲尾さんが変な人なんだけど(笑)」「(このメンバーと会うのが)久し振り。古川さんはパトレイバーで会っていたけど、文さんとかは。鷲尾さんは御先祖様以来」「原作が人気のある作品なので、声があわないとかキャスティングにもめた」「文さんはあっさり決まったけど、古川さんのあたるとか鷲尾さんのサクラは大変だった」

鷲尾「私は(もめたことを)知りませんでした」

古川「(音響監督の)斯波さんに喫茶店に呼ばれて、『こんなに声が違うという葉書が来たんだけど、変えられます?』『変えられません』って」「降ろされるなって思ってました」

押井「鷲尾さんは斯波さんのお気に入りだったから知らせなかったと思うんだけど、非難囂々でした」「毎週プロデューサーとかと喧嘩してました」「サクラが登場したのがシリーズ途中からなんだけど、やった翌日から電話ががんがん鳴って。『あの美しいサクラさんの声がなんでおばさんなんだ』って」「でも斯波さんも僕も思ってたんだけど、サクラは確かに美人でグラマーで色っぽいけど、(大食いで)牛一頭食っちゃうようなパワーのあるキャラだから、鷲尾さんくらいのパワーがないとできない」「うる星のキャラはどれもこれもテンションが高くて、普通の声優じゃできない」「うる星のキャラは基本的にみんな人格が分裂しているんですよね(笑)」「だから演技力のある濃い役者じゃないとできない」「楽しかったけれども、ブースのガラスの向こう側では毎週喧嘩やってた」「僕も首になりかけたけど、2クール目くらいから安定してきて視聴率も20%越えて、そこからやりたいことができるようになった、というか誰も何も言わなくなった」「最初は本当に大変で、毎日僕の所にも手紙が沢山来てた、八割くらいが罵声だった」「基本的に目を通すんだけど、最初の2〜3行を読むと悪口を言いたいのか、誉めてくれてるのか判る」。「それでゴミ箱に捨てるか、引き出しにしまうか判断してた」「今思うと若かった。勢いがあった」「斯波さんという存在が大きかった、色々と庇って貰ったし、影の監督といっても良いくらい」「ビューティフルドリーマーも斯波さんが気にいってくれて、かなり気合いが入ってた」「話の舞台が学園、日常というのはやりがいがあった。オンリーユーの事はほとんど何も憶えてない」「ビューティフルドリーマーは絵がほとんどある状態で収録できたので、映画らしく作れた。声優さんも絵があるのと無いのとでは芝居が全然違うし」「やりがいのある仕事で、心残りなく終えられた。これが終わったら(うる星を)辞めると決めてたし。いつまで続くか判らない世界になってたので、体が持たないし、他のことがやりたくなった」。

押井「基本的に自分の作品は見ないので、これもイヴェントで2〜3回しか見ていない。DVDのマスタリングのため久し振りに見たが、冷や汗たらたらでした」「若いしスキだらけだし。でも勢いがあるなって。今できるかと言われたら多分できない。当時ヤケクソになっていたというのもあるんだけど(笑)」「この作品で僕の監督家業というのも変わりました」「映画という中で語って貰えて当時は嬉しかったけど、良いことも悪いこともあって、悪いことは『何やっても映画になるんだ』という思いこみが出来て痛い目にあった」「この後の天使のたまごとか、致命的だったのはここの三人にも出て貰った紅い眼鏡」「確かに何やってもいいんだけど、その一方で冷静な計算も必要だということを憶えるのに20年かかった」「好きなことやる一方でお客さんを喜ばせることが必要なんだけど、その頃は何も考えていなかった」「この作品の初号の時は雪が降っていてしんみりしていて、『僕もこれで映画は終わりかな』とか思ってた」

コメンタリー

押井「やまざき君が当時行方不明で連絡が付かなくて、急遽西村君と千葉君と三人でやった。僕は一カット目を見た途端にだーっと全部思い出して、気付いたらほとんど一人で喋ってた。千葉君も喋る暇なかった。僕は『当時これしかできなかった』とか。」。

TVシリーズ

押井「やまざき君が当時行方不明で連絡が付かなくて、急遽西村君と千葉君と三人でやった。僕は一カット目を見た途端にだーっと全部思い出して、気付いたらほとんど一人で喋ってた。千葉君も喋る暇なかった。僕は『当時これしかできなかった』とか。」。

押井「うる星やつらの後半は絵は上がらないわ線録だらけだわで満身創痍。しかし、『BD』は声優さんの芝居も音響の演出もしっかり出来た。アニメーションの力は音が半分、絵が半分。絵が出来てないと声優さんも芝居が出来ない。毎週アフレコ現場に通って、これで音の演出の重要さというのを学んだ。実写でも同じで、いつも音をどうするか考えながら撮っている。監督というのは次のステップのことを考えていないと駄目。アフレコの現場で千葉君のアドリブで笑っていても、次のことを考えていないとならない。楽しかったけど二度と御免」。

平野「絵がないとどんな演技をしたらいいか判らないけど、うる星やつらの場合は絵が無くても出来るんだという自信や安心感があった。押井さんの『こうしてほしい』という雰囲気が判るのと、斯波さんへの信頼感があったと思います」

古川「斯波さんの的確な指示があったし、押井さんはあまり降りてこなくて指示があっても一言か二言だけど、上を見るとくすくす笑っているのが見えて『ああ、大丈夫だな』と」

アフレコ現場の話

平野「土曜日の朝10時から収録をやっていたんですが、押井さんが毎日通っていた、通わざるを得ない磁力みたいな物があったのではと思いますね」

押井「現場に行くまでの坂道がきつかったね(笑)」 平野「夏は特に(笑)。スタジオがお寺の半分地下みたいなところで、納骨堂があって、周りがお墓で」

古川「誰も喋っていないのに、女の人の声が収録されていたとかいう話が(笑)」

押井「アフレコは昼間だけどダビングは大体徹夜作業になるから怖くて(笑)。毎回必ず同じ時刻に『かたっ』という音がするとか。あそこにあったかちんかちんのソファーで良く寝てました。斯波さんも寝たけど僕も良く寝た。ピアノがあって、ピアノカバーにくるまって寝るというのが最高の贅沢だった(笑)」

キャスターからみた押井監督

平野「(TV版について)キャストの熱さが線録を可能にした。押井さんと斯波さんが頑張っていた」。

DVDについて

押井「結構綺麗です。ネガの保存状態が良かった。望む限りほぼ最高の音源を再現できた。買って損はないと思います」。

新作の予定は?

押井「○○○のパート2をやっています。○○○とはみなさんが想像しているものです。他に、ガンアクションものをやっています。20分ぐらいのものです」。

上映中の出来事

上映が始まった。スクリーンで観る機会はそれほど多くないこともあり、「大きい画面はいいなぁ」となる。観客の誰も(中高生らを含む!)が既に何度も観ているのだろうか、笑い声は全く聞こえない。

途中でトイレに立ったついでに、2階席最前列から観たり、脇通路から会場内を見渡したり。入場者数は400人強ってとこか。缶ジュースは160円。ロビーでは、試写会スタッフの方々がいろいろと作業していた。少し話してから座席に戻る。

やがて、エンディング。いつの間にやら体温が上昇している実感がある。本当に私は『うる星』が好きなんだ!

エンディングの後は特になにも公演はなく自然終了。まぁ、試写会なのだから贅沢は言えないか。

ところで私、この試写会で小さなショックを受けました。それは「台詞を1文字だけ覚え間違えていた!」です。まだまだ修行が足りないなぁ。DVDを買ったら改めて頑張ろう(笑)

おつかれさま

ヤマハホールを後にしたのは21時半。牛丼を食べてから帰りたかったのだが、もはや時間もなく帰路につく。

Satoshi ARAI ( arai@rumic.gr.jp )